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知財コラム
2015.12.6
中国代理人から提供された資料を以下に引用します。
さらに詳しい情報については、弊所までお問い合わせください。
特許法改正案(意見募集稿)の説明
1 . 特 許法改正の必要性
中国経済社会の急速な発展に伴い、知的財産権の保護を強化し、自主イノ
ベーション能力を向上させることは、経済発展方式の転換を加速し、イノベーシ
ョンによる発展戦略を実施するうえで内在的な要求となっている。これまでに、中
国共産党の第1 8 回全国代表大会では、「知的財産権戦略の実施、知的財産
権の保護強化」が明確に提示され、中国共産党第1 8 期中央委員会第3 回全
体会議では、「知的財産権の運用と保護の強化、科学技術イノベーションの奨
励メカニズムの最適化」が強調され、中国共産党第1 8 期中央委員会第4 回全
体会議では、「依法治国(法に基づき国を治める)を全面的に実施すること」、
「イノベーションを奨励する財産権制度、知的財産権の保護制度及び科学技術
成果転化を促進する体制・メカニズムを整備する」ことが提出された。このような
新たな情勢の下、特許法律制度に対して、より新しく、よりハイレベルな要求が
出されている。
ここ数年、中国では、特許保護において着実かつ効果的な業務を展開し、世
界的に認められる大きな成果や進歩を遂げている。しかし、科学技術が発展し、
市場競争が激化するに伴い、特許保護分野における新たな問題、新たな矛盾
が相次いで出現している。「知的財産権侵害と偽物・粗悪品の製造、販売の取
締」に関する特別活動の実施過程において、特許権侵害現象が普遍的に存在
しており、特に、グループによる組織的侵害、繰り返し侵害が比較的深刻な問
題となっている。さらに、特許権の無形性と権利侵害行為の隠匿性などの特徴
も加わり、特許権益を擁護するには、立証が困難で、周期が長く、高コストで賠
償金額が低く、効果も低いため、中国の一部のイノベーション型企業は大変苦
しい立場に立たされることになっている。これらの企業は、イノベーションから利
益を獲得することが難しいだけでなく、市場競争で優位な地位を得ることも困難
になっている。特許保護の力不足のため、中国企業のイノベーションに係る積
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極性を大いにくじき、ひいては一部企業の特許保護に対する信頼喪失を招いて
いる。
このような背景のもと、中国知識産権局は、2 0 1 1 年1 1 月から特許法特別改
正の準備作業に着手し、北京、浙江、江蘇、湖南及び広東などの各地で相次
いで現地調査を行い、関連セミナーやフォーラムを何度にもわたり開催した。各
方面の意見を十分に汲み取った上で、『中華人民共和国特許法改正案(意見
募集稿) 』を作成し、2 0 1 3 年1 月に国務院に報告した。2 0 1 4 年上半期、全国人
民大会常務委員会が特許法法執行に関する調査作業に着手し、特許品質、
特許保護、特許運用、公共サービスなどの方面から特許法改正について具体
的な意見を提出した。よって、2 0 1 3 年特許法改正案(意見募集稿)に対して、さ
らに補充、修正をして、改正を全面的に行う必要があったので、中国知識産権
局は、社会各界から広範な意見を募集した上、2 0 1 3 年特許法改正案(意見募
集稿)をさらに補足、修正し、新たな『中華人民共和国特許法改正案(意見募
集稿)』(以下、意見募集稿という)を作成したものである。
2. 指導思想
今回の特許法改正の指導思想は以下のとおりである。中国の特色ある社会主義の偉大
な旗印を高く揚げ、鄧小平理論と重要思想「三つの代表」、科学的発展観に基づき、中国
共産党の第18 回全国代表大会、中国共産党第1 8 期中央委員会第3 回全体会議
及び中国共産党第1 8 期中央委員会第4 回全体会議の精神を全面的に貫徹、
実行し、『中国共産党中央国務院の体制・メカニズム改革を深化させ、イノベー
ション駆動による発展戦略の実施を加速することに関する若干意見』の要求を
実行する。共産党と国の大局をしっかりと把握し、知的財産権強国の建設する目標を打
ち出し、中国の現状を踏まえ、世界に視野を広げ、中国特許法実施における際立った問題
に対して、方向性のある解決策を提出し、厳格な特許保護制度を実施するものである。発
明者の合法的な権益を保護し、特許の実施及び運用を推進し、全社会のイノベーション活
力を十分に励起させ、科学技術と経済体制改革の深化、経済発展方式の転換、イノベー
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ションによる発展戦略の実施、イノベーション型国家の建設などのために、法的
保障を提供するものである。
3. 特許法改正の主な内容
意見募集稿において実質的な改正に関わる条文は33 条あり、「特許の実施及び運用」
という1 章が新設された。そのうち現行法条文に対する改正は18 条で、新設した条文が14
条、削除した条文が1 条であった。また、適宜に文言に対する修正又は調整が行われた条
文は4 条である。
主な改正内容は以下とおりである。
① 特許の保護力の強化、特許権者の合法的権益の保護
中国の特徴のある特許保護制度をより一層改善し、厳格な特許保護制度を実行する。
特許保護の強化、法執行力の向上をめぐって、権利者に普遍的に指摘されている特許権
保護の立証が困難で、周期が長く、高コストで賠償金額が低く、効果が悪いなど
の問題に対して、相応する措置を提出し、特許権侵害に打撃を与える長期的
に効果あるメカニズムを構築し、特許の行政法執行と司法保護との効果的なつ
ながりを推し進め、法執行の効率を向上させ、特許権保護のコストを低減させ、
公正公平、規範的で透明な法治及び市場環境を整備するものである。主な改
正内容は以下とおりである。「立証が困難」である問題を解決するために、関連
証拠規則を整備した。「周期が長い」問題を解決するために、行政調停による
合意の効力を明確にしている。「賠償金額が低い」問題を解決するために、故
意の権利侵害行為に対する懲罰的な賠償制度を追加した。「高コストで賠償金
額が低く」問題を解決するために、グループによる組織的侵害、繰り返し侵害な
どの故意の権利侵害行為に対する処分を追加し、特許詐称事件に対する処
罰を強化し、行政法執行の手段を整備し、間接権利侵害の責任とインターネッ
トサービスプロバイダーの法的責任を明確にして、特許権保護信用情報ファイ
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ルを構築した。(第60 条~第63 条、第66 条~第68 条、第74 条)
② 特許の実施及び運用を促進し、特許の価値を実現する。
職務発明制度を整備し、発明創造、管理及び運用における顕著な問題を解決し、市場ニ
ーズを誘導する特許技術転換メカニズムを構築、整備し、イノベーションのさらなる促進や
特許の実施及び運用を推し進める。以下のような改正を提案している。発明者、考案者、
創作者の積極性を十分に発揮するために、技術イノベーションを促進し、職務
発明創造の範囲を明確し、所属企業や組織の物質的技術条件を利用して完
成させた発明創造の帰属は優先原則を適用することを規定した。また、「国が
設立した研究機構、大学の特許技術転換率が低い」問題を解決するため、発
明者、考案者及び創作者は企業又は組織との協議に基づき、特許技術を実
施し、その相応収益を得ることができるようにした。「特許ライセンスのライセンサ
ーとライセンシーとの情報が把握できない」問題を解決するため、外国の経験を
踏まえ、特許当然許諾制度を導入し、特許ライセンスのコストを低減している。
標準と特許の関係をうまく処理するため、標準必須特許の黙示的許諾制度を
規定し、特許権の濫用を防止するための原則的な規定を追加した。(第6 条、第
14 条、第16 条、第81 条~第85 条)
③政府職能の法定要求の実現とサービス型の政府の建設
法治国家、職能を法によって定めることにより、政府部門職能の転換を加速させ、国
家及び地方の特許行政部門の職能を明確し、特許行政部門の市場監督管理、特許公共
サービスの提供、特許運用の促進などにおける責任を強調した。(第3 条、第21 条、第75
条、第79 条)
④特許審査制度の整備と特許品質の向上
国際的な発展動向を見極めながら、中国経済発展とイノベーションのニーズに適応する
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ため、特許保護対象の範囲を適当に拡大させ、部分意匠に対する保護が追加され、意匠
の存続期間が延長された。出願人に便宜を提供し、特許品質を向上させる観点から、特許
出願、審査、不服審判と無効審判の手続を最適化し、意匠の国内優先権制度を追加し、優
先権にかかる要求の規定を整備し、特許不服審判及び無効審判手続きの職権による審査
の原則をより明確にした。(第2 条、第19 条~第20 条、第29 条~第30 条、第41 条~第
42 条、第46 条)
⑤特許代理の法的制度の整備と知的財産権サービス業の健全な発展の促進
実践発展のニーズに基づき、特許代理の法的制度を一層整備するために、特許代理機
構、特許弁理士の開業の基準を規定し、特許代理業務における監督管理を強化し、「ブラ
ック代理」行為を制止している。特許代理業界の組織に対して、合法的な経営、信義誠実を
守り、秩序ある競争ができる法的環境を整えることを明確に規定している。特許行政部門
の特許情報市場化サービス及び特許運営活動における責任を奨励し、規範化することを
明確にした。市場化、専門化、国際化の進んだ特許情報サービス機構を積極的に育成し、
イノベーションの主体に特許戦略の計画、特許分析予測、国外権利保護などの高いレベル
のサービスを提供している。(第19 条、第75 条、第79 条、第88 条)
そのほか、一部の条文に対して、適宜適切な改正を行った。(第25 条、第47 条、第64
条、第86 条)